大女将のトマト

寒の地獄旅館

0973-79-2124

〒879-4911 大分県玖珠郡九重町田野257番地

受付時間/8:00〜20:00 休館日/水曜日

大女将のトマト

寒の地獄だよりお食事

2026/08/28 大女将のトマト

夏になると、決まって同じことを聞かれます。
「あのトマト、どうやって作るんですか」
高原トマトの白ワイン煮のことです。

 

飯田高原で穫れた完熟トマトに、白ワインでさっと熱を通す。冷やして、小さな器にひとつ。甘い箸休めです。献立のどこに置いても収まりのいい、実に行儀のよい一品なのです。

 

高原トマトの白ワイン煮

 

お出しできるのは、高原トマトが出荷され始める七月の下旬から、収穫の終わる九月の半ばまで。いつからいつまでと決めて書けません。畑の都合ですから。お品書きに載る日もあれば、載らない日もあります。出会えたら幸運、くらいに思っていただきたいのです。

 

仕込むのは大女将です。私ではありません。
レシピは、いまだに教わっておりません。
聞けば教えてくれるのでしょうが、なんとなく聞きそびれたまま、また一年が過ぎました。毎年これです。

 

薀蓄をひとつ。トマトの湯むきは、熱湯にくぐらせてすぐ冷水へ落とします。皮と実で膨らみかたが違うので、ぺろりと剥けるのです。理屈を知ったところで、二十個も剥けば指先は熱い。大女将は黙って剥いています。

 

湯むきを終えた高原トマト

 

旅先で心に残る一品に出会う。それは旅の思い出を彩るスパイスのようなものかもしれません。
もっとも当館の場合、その調合は、いまだ大女将の胸の内にあります。

 

ですからこれは私の味ではありません。大女将の味です。
——この言い訳、あと何年使えるでしょうか。

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