なぜ、寒の地獄のウィスキーは種類が多いのか

寒の地獄旅館

0973-79-2124

〒879-4911 大分県玖珠郡九重町田野257番地

受付時間/8:00〜20:00 休館日/水曜日

なぜ、寒の地獄のウィスキーは種類が多いのか

寒の地獄だよりお食事

2026/08/27 なぜ、寒の地獄のウィスキーは種類が多いのか

寒の地獄旅館の夜 お食事処のウィスキー

 

「山の宿なのに、ずいぶんウィスキーが揃っていますね」

 

 お食事処で、ときおりそう言われます。褒められているのか、呆れられているのか。判然としないまま、私はいつも少し嬉しくなる。理由は簡単で、あれは宿の趣向というより、私の道楽だからです。

 

 話はもう二十年あまり前、二〇〇〇年代のはじめにさかのぼります。大学院生のころ、大学の近くにあった小さなバー。扉が思いのほか重かったのを覚えています。それまで私にとって酒とは、焼酎であり、チューハイでした。大勢で騒ぐための燃料。味を覚えるより先に翌朝の頭痛を覚える、あの種の酒です。

 

 マスターが黙って置いたのが「114」でした。オールド・グランダッド114。ウィスキーには「プルーフ」という古い単位がありまして、二で割ると度数になる。つまり、五十七度。数字にすると、ずいぶん物騒です。

 

 琥珀色は思っていたより濃い。含むと、まず熱が来ます。たじろぐ。そのあとを追いかけるように、甘い香りがゆっくりと広がる。冬の炭火に手をかざしたときの驚きと心地よさが一緒くたになった感じ、とでも申しましょうか。

 

 以来、私の飲み方は変わりました。友人がひとり、マスターがひとり、私。三人です。用事はありません。その日あったことや、どうでもいい話をぽつり、ぽつりと交わしながら、ショットを空ける。話が途切れても平気でした。むしろ、その沈黙までが酒の一部だったように思います。

 

 ひとつ、白状しておきます。チェイサーの話です。ふつうは氷水でしょう。ところが調子のよい日の私は、チェイサーが生ビール。せっかく114と与太話で得た酔いを、氷水で醒ましてしまうのが惜しいのです。理屈は通っていません。通っていませんが、今でも私のチェイサーはビールです。

 

 寒の地獄の夜も、どこか似ています。冷たい源泉に身を沈め、温かい湯で体を戻す。そのあとの夜は、なぜか言葉が静かになる。盛り上がるためではなく、流れていく時間そのものを味わうために、一杯を選ぶ。そういう夜に応えられる宿でありたい――そう思っているうちに、お食事処の棚は少しずつ賑やかになりました。

 

 お好みの決まっている方も、まだご自身の「114」に出会っていない方も、どうぞお気軽にお声がけください。チェイサーのご希望も、遠慮なく。

 

 ご来館を心よりお待ちしております。

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